第22回演奏会のご案内
第22回定期演奏会は、終了いたしました。
次回演奏会へのご来場を、心からお待ち申し上げます。
一部広報誌に、開演時間の誤りがありました。謹んでお詫び申し上げます。
■ 指揮者紹介
柳澤寿男 / 指揮
Toshio YANAGISAWA / conductor
1971年生まれ。パリ・エコール・ノルマル音楽院オーケストラ指揮科に学ぶ。指揮を佐渡裕、大野和士の各氏に師事。2002年夏、スイス・ヴェルビエ音楽祭指揮マスタークラスオーディションに合格し名匠ジェイムズ・レヴァイン、クルト・マズアに師事。
2000年東京国際音楽コンクール(指揮)第2位受賞。2001年3月、大阪フィルハーモニー交響楽団、新星日本交響楽団を指揮してデビュー。同年12月、新日本フィルハーモニー交響楽団定期演奏会を指揮し定期デビューを果たし注目を集める。以降国内では、大阪フィル、新日本フィルをはじめ、東京フィルハーモニー交響楽団、東京都交響楽団、京都市交響楽団、神戸市室内合奏団、シエナ・ウインド・オーケストラ、大阪市音楽団などを指揮。オペラでは、ラヴェル「子供と魔法」、マスネ「シンデレラ」、プーランク「ティレジアスの乳房」「人間の声」といったフランスオペラを指揮し好評を得ている。また海外では、2003年にロシア国立エルミタージュ交響楽団を指揮して海外デビューを果たす。2004年秋、マケドニア旧ユーゴスラヴィア国立歌劇場にてプッチーニ「トスカ」を指揮して大成功を収めた。
2005年は、日本フィルハーモニー交響楽団「フレッシュ名曲コンサート」に出演するほか、大阪市音楽団、サンクトペテルブルグ市立交響楽団、マケドニア旧ユーゴスラヴィア国立歌劇場プッチーニ「蝶々夫人」を指揮する。
今最も注目してほしい若手指揮者!
■ 曲目紹介
次回演奏する2つの交響曲は、今は亡きソヴィエト連邦という国が生んだ代表的な交響曲で、いずれも国家の政策というものが大きな影響を及ぼしている作品です。
●ショスタコーヴィチ 交響曲第5番
まずメインのショスタコーヴィチ(1906-75)の交響曲第5番ですが、これは1937年に作曲されたものです。ショスタコーヴィチはこれに先立つ諸作品、歌劇《ムツェンスク郡のマクベス夫人》、バレエ《明るい小川》、交響曲第4番などで、「西欧的形式主義」で「社会主義的リアリズム」に反する(簡単にいうと、作品に明確な筋がなくてわかりにくいぞ)と批判されました。なかでも1936年に完成された交響曲第4番はリハーサルの段階で批判されたので、作曲者は初演を待たずに楽譜を引っ込め、実際に初演されたのは25年後の1961年でした。
交響曲第5番は、そうした批判に応えるべく作曲されました。ベートーヴェンの《運命》やチャイコフスキーの第4・第5交響曲のように「闘争から勝利へ」という明確な筋を持つこの作品は、1937年11月21日のソヴィエト革命20周年記念日に初演され(そのためこの曲を《革命》と呼ぶ人もいます)、今度は圧倒的な賞賛を持って迎えられました。
ところがショスタコーヴィチの死後、有名なソロモン・ヴォルコフによる『ショスタコーヴィチの証言』(中公文庫から邦訳あり)の刊行後、「終楽章の取って付けたような歓喜のコーダ(ティンパニがおいしいところ)は、強制された歓喜だった」と本人が語っていたということが明らかにされました。この証言自体を疑問視する向きもありますが、この『証言』刊行後、この曲の解釈は変わってきているようです。
●プロコフィエフ 交響曲第7番 《青春》
病気がちだった晩年のプロコフィエフ(1891-1953)によって、1952年に完成された交響曲第7番も、同じような成立の経緯をたどっています。これに先立つ歌劇《戦争と平和》や交響曲第6番が、「形式主義的」だとソ連当局から1948年に批判されたのに応えて作曲されました。そこでプロコフィエフは「よりいっそうわかりやすい音楽」を書こうと努力し、それがこの交響曲第7番となって結実しました。タイトルの《青春》については、作曲者自身がこの曲について「青年の前途の喜び≠ニいう思想によって生まれた作品である」と述べ、自ら《青春交響曲》と呼んでいたということが伝えられています。作曲者の死後に妻のミーラが語った言葉によれば、「若者についてのシンフォニー、ソヴィエトの若者と作曲者自身の青年時代についてのシンフォニー」だということです。
なお、この曲を演奏する上で重要なことのひとつに、終楽章の終結部の問題があります。プロコフィエフが書いたオリジナルはグロッケンや木琴、ピアノなどが余韻を残しながら静かに終わるというものだったのですが、これについて初演の指揮者サミュエル・サモスードから「簡潔でない」とリクエストされ、プロコフィエフは第4楽章冒頭の主題を用いた短いながらも賑やかな終結部を作りました。この曲の終わり方に2パターンあるのはこのためです。しかしプロコフィエフ自身は、この賑やかな終結部を好ましく思っていなかったそうで、今回の亀オケの演奏でもプロコフィエフの最初の意志を尊重して、オリジナル版(静かに終わるヴァージョン)で演奏します。
■ CD&スコア紹介
●ショスタコーヴィチ 交響曲第5番
スコアは全音楽譜出版社から国内版(クリティカル版=研究者によって校訂された版。1365円)が出ています。ただし超ミニチュア・サイズで楽譜が細かいので、余裕のある方は海外版をオススメします。海外版はEurenburg、Boosey & Howkes、Sikorski(いずれも全音よりは一回り大きいサイズ)から出ています。またもっと大きいサイズ(指揮者用)がいいという人には、最近ロシアのDSCHという出版社から全集版の新版が出ましたので、こちらを入手されるのもいいのではないでしょうか。価格はアメリカの楽譜通販で60ドル(+送料)でした。ちなみにDSCHというのはショスタコーヴィチのドイツ語表記(Dimitri Schostakowitsch)の頭文字で、ショスタコーヴィチはこの4つの頭文字を音名になぞらえて(DSCH=D、Es、C、H=ニ、変ホ、ハ、ロ)、交響曲第10番などの作品のモチーフに使っていました。
CDはたくさん出ていますが、今回の指揮者の解釈はロシアの演奏家によるものに近いと予想していますので(外れたらごめんなさい)、そのあたりがよろしいかと思います。特に終楽章のコーダは、西側の演奏家の古い録音はおおむねテンポが速いので(西側に出回っていた出版譜の速度記号の違いによるそうです)、参考CDとしては避けた方が無難かもしれません。
●プロコフィエフ 交響曲第7番 《青春》
スコアは全音楽譜出版社から国内版(クリティカル版。1995円)が出ています。サイズも同社のショスタコよりは一回り大きいのでこれで十分でしょう。それでも海外版がいいという人には、Sikorski版がありますが、全音とサイズも変わらないので、あまり意味はないかもしれません。
CDですが、できれば今回演奏するオリジナル版(静かに終わる版)がいいでしょう。となると限られてくるのですが、現段階で私が確認したところでは、以下のものがそうです。ロストロポーヴィチ指揮フランス国立管盤(Warner Classics)、小澤征爾指揮ベルリン・フィル盤(Grammophon)、アシュケナージ指揮クリーヴランド管(Decca)。いずれも国内盤もカタログにはありますが、輸入盤の方が入手しやすいでしょう。小澤は全集、アシュケナージは1、5、6番も入った2枚組ですが、輸入盤は結構安価です。
反対に今回演奏しない方、賑やか版での演奏は、マルティノン指揮パリ音楽院管(Decca=London、Testament)、マルティノン指揮フランス国立管(Vox)、プレヴィン指揮ロンドン響(EMI)、プレヴィン指揮ロサンジェルス・フィル(Philips)、マルコ指揮フィルハーモニア管(EMI)、ヤルヴィ指揮スコティッシュ・ナショナル管(Chandos)などです。
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