第23回演奏会のご案内
第23回定期演奏会は、終了いたしました。
次回演奏会へのご来場を、心からお待ち申し上げます。
■ 指揮者紹介
佐藤 和男 / 指揮
Kazuo SATO / conductor
宇都宮大学音楽科卒業後、東京音楽大学指揮科に於いて三石精一氏に師事。1990年イタリアに渡り、キジャーナ音楽アカデミーに於いてF・ライトナー氏に師事。ルッセ・フィルハーモニー管弦楽団及びソフィア交響楽団を指揮する。また、オペラ研修所“ラ・フチーナ”に於いてN・サマーレ氏のもとで、イタリア・オペラの研鑚を積み、同研修所公演のプッチーニ「ジャンニ・スキッキ」等を指揮する。1993年ペドロッティ国際指揮者コンクールに入選。クライオーヴァ歌劇場管弦楽団などを指揮した後、1995年に帰国。現在は日本オペラ振興会、横浜シティ・オペラなど各地のオペラ、オーケストラ等で活動している。
■ ソリスト紹介
河野 肇 / 管セクショントレーナー
武蔵野音楽大学器楽科卒業。園清隆、安原正幸両氏に師事。
1969年新星日本交響楽団に入団。1991年同団を退団、フリーランス奏者として演奏活動を続ける。日本ホルン協会の設立に参加(1988年)。理事、事務局長を経て、現在常任理事。また東京外語大学管弦楽団、中央区管弦楽団等のトレーナーとして後進の指導にもあたる。
江東シティオケとの付き合いをひとことで言い表すとすれば、酒席ホルン走者と しての活動が最も深く盛んである。
■ 曲目紹介
●ワーグナー:歌劇《タンホイザー》序曲
《タンホイザー》は19世紀ドイツの大作曲家リヒャルト・ワーグナー(1813〜1883)が書いた比較的初期の作品。この作品はまだ「歌劇Oper」として作られていますが、総合音楽芸術作品の創造を目指したワーグナーは「歌劇」という枠組みでは不十分と考えるようになり、後に「楽劇Musikdrama」というジャンルを生み出します。
それはさておき、今回演奏するのは、ワーグナーが1843年から44年にかけて作曲、1845年にドレスデンで初演された歌劇《タンホイザー》の壮大な序曲です。12〜13世紀ドイツのチューリンゲン地方にあるヴァルトブルク城で行なわれていた歌合戦と、ミンネゼンガーという吟遊詩人にまつわる伝説をもとにしています。異教の女神ヴェーヌスに誘惑されてその官能の虜になってしまった吟遊詩人タンホイザーが、彼を愛するチューリンゲンの領主の姪エリーザベトの自己犠牲によって救済されるという物語です。
この序曲は3つの部分から成っています。第1部はオペラの中で歌われる敬虔な巡礼者たちの合唱の厳かなテーマ。続く第2部は対照的なヴェーヌスベルクでの饗宴(バッカナール)の音楽。そして第3部は再び巡礼者たちの合唱、しかし今度は規模が拡大されており、序曲はそのまま華やかに幕を閉じます。
ところでワーグナーは1861年、このオペラをパリで上演する際に序曲の第3部を省略し、そのまま第1幕のバレエ〈ヴェーヌスベルクの音楽〉に休みなく続くように改訂しています。これは「パリ版」と呼ばれ、この「パリ版」も〈序曲とヴェーヌスベルクの音楽〉として単独でしばしば演奏されていますが、今回演奏するのは初演時の「ドレスデン版」の方です。
●リヒャルト・シュトラウス:ホルン協奏曲第1番変ホ長調作品11
ドイツの作曲家リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949)が若き日に書いた代表作のひとつ。ミュンヘンの宮廷楽団で活躍し、ホルンの名手として名を轟かせていた作曲家の父、フランツ・シュトラウス(1822〜1905)の還暦を記念して作曲されました。というわけですから今回の選曲にあたり、同じく還暦を迎える河野先生がこの曲にこだわったのも納得がいきます。
曲は1882年に着手され、翌83年に完成、同年ピアノ伴奏の形で、父フランツの弟子であるブルーノ・ホイヤーのホルン独奏によって初演されました。1884年に出版された楽譜もピアノ伴奏版で、作品自体も父ではなく、ザクセンの宮廷音楽家でホルンの名手だったオスカー・フランツに捧げられました。不思議な話ですが、父フランツはこの作品を聴衆の前では一度も演奏したことがなかったそうです。管弦楽伴奏での初演は1885年に行なわれました。
なお、この曲の独奏ホルン・パートはヴァルヴのないナチュラル・ホルン(Waldhorn)を意識して書かれたので、楽譜にもKonzert fur Waldhornと記載されています。曲は切れ目なく続く3つの楽章から構成されています。
ちなみにシュトラウスは、約60年後の1942年に、ホルン協奏曲第2番を完成しています。
●ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調作品95《新世界より》
ボヘミア(現在のチェコ)の作曲家アントニン・ドヴォルザーク〔より正確な発音はドヴォ[ル]ジャーク〕(1841〜1904)が新大陸アメリカで作曲した、彼にとっての最後の交響曲です。
ドヴォルザークはその数年前に創設されたばかりのニューヨークのナショナル音楽院の院長に招かれため、1892年9月に新大陸アメリカに渡りました。最初は渡米に躊躇していたドヴォルザークでしたが、音楽院の設立者ジャネット・サーバー夫人の熱心な説得に最後には応じたのです。しかしそれがこの名作交響曲を誕生させるきっかけとなりました。
ドヴォルザークは渡米から4ヶ月後の1893年1月にこの曲に着手し、5月には完成させました。そして初演はその年の12月にカーネギー・ホールで、ニューヨーク・フィルの演奏によって行われ、圧倒的な成功を収めました。
作曲家自身が「もしアメリカを見なかったら、この交響曲は書けなかったでしょう」と述べているように、この交響曲にはドヴォルザークのアメリカでの体験が盛り込まれているので、交響曲第8番までの作風とはちょっと趣が異なります。《新世界交響曲》の主要主題と、アメリカの民謡や黒人霊歌等の類似などを指摘されることもありますが、ドヴォルザークはこうした指摘に対しては「アメリカ民謡の精神をくんで作曲したのです」と毅然として応えていたそうです。
曲は4つの楽章から構成されています。第2楽章のテーマが《家路》というタイトルで単独でもよく演奏されたり、歌われたりしていることについては、説明の必要はないでしょう。
蛇足ですが、ドヴォルザークの現在知られている9つの交響曲のうち、生前に出版されたのは、現在「第5番作品75」として知られている曲以降の5曲だけだったので、《新世界交響曲》もかつては「第5番」として通っていました。古い楽譜などに(今回亀オケの演奏で使う楽譜もそうです)“Symphony No.5”とあるのはそのためです。
■ CD&スコア紹介
●ワーグナー:歌劇《タンホイザー》序曲
○スコア
[1]音楽之友社 1365円
(ウィーンのユニバーサル社、フィルハーモニア版のライセンス版です)
[2]全音楽譜出版社 840円
※上記のどちらでも問題ないと思いますが、[2]の方が安いですね……。
○CD
[1]ゲオルグ・ショルティ指揮ウィーン・フィル
〈1956年録音〉[デッカ UCCD3380〜1] 2枚組2900円
(ワーグナーの主要管弦楽作品を網羅した2枚組)
[2]クラウス・テンシュテット指揮ベルリン・フィル
〈1982,83年録音〉[EMI TOCE13573〜4] 2枚組2300円
(同じくワーグナーの主要管弦楽作品を網羅した2枚組)
[3]ジュゼッペ・シノーポリ指揮ドレスデン国立管
〈1995年録音〉[グラモフォン UCCG9461] 1200円
(《リエンツィ》序曲や《恋愛禁制》序曲なんて珍しい曲も入ってます)
[4]ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ミュンヘン・フィル
〈1962年録音〉[ウェストミンスター UCCW9001] 1800円
(《マイスタージンガー》《トリスタンとイゾルデ》などとの組み合わせ)
※今回演奏するヴァージョンは「ドレスデン版」です。「パリ版」を購入しないようにお気をつけください。「序曲とヴェヌスベルクの音楽」と書いてあるCDは後半が違いますので要注意。ウィーンかベルリンか、同じドイツでも東のドレスデンか南のミュンヘンか、お好みでお選びください。[4]はちょっと個性的過ぎるかも。
●リヒャルト・シュトラウス:ホルン協奏曲第1番
○スコア
[1]Universal社Philharmonia版 3980円(アカデミア・ミュージックのサイトでの価格)
※この曲は国内版のスコアが出ていません。上記のものが一番入手しやすいと思われます。
○CD
[1]デニス・ブレイン(hrn)サヴァリッシュ指揮フィルハーモニア管
〈1956年録音〉[EMI TOCE59164] 1700円
(他に第2番、ヒンデミットの協奏曲などを収録)
[2]バリー・タックウェル(hrn)アシュケナージ指揮ロイヤル・フィル
〈1990年録音〉[デッカ POCL5280] 2039円
(シュトラウスのホルン作品を網羅したディスク)
[3]ラルス=ミヒャエル・ストランスキー(hrn)プレヴィン指揮ウィーン・フィル
〈1996年録音〉[グラモフォン POCG10058] 3059円
(第2番、オーボエ協奏曲、二重協奏曲(clとfg)を収録)
[4]ヘルマン・バウマン(hrn)マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管
〈1983年録音〉[フィリップス UCCP9036] 1200円
(第2番等とのカップリング。)
[5]ラドヴァン・ヴラトコヴィチ(hrn)テイト指揮イギリス室内管
〈1988年録音〉[EMI TOCE13082] 1300円
(第2番等とのカップリング)
※[1]は伝説の名手ブレインの名録音(ただしモノーラル)、[2]はその伝統を受け継ぐイギリスの名手(オーストラリア出身)による録音。[3]はウィーン・フィル首席奏者による録音で、ウィンナ・ホルンの響きがなめらかです。[4][5]はドイツ系の名手によるもので、録音も新しく値段も手ごろです。輸入盤では[2]なども1000円以下で買えるようです。
●ドヴォルザーク:交響曲第9番《新世界より》
○スコア
[1]ジェスク音楽文化振興会/アーツ出版 1995円
(チェコのSupraphon社のクリティカル・スコアのライセンス版です。ヤマハ等の大きな楽器店で売っています。ジャパンアーツのホームページ(http://www.japanarts.co.jp)からも入手可能です。)
[2]音楽之友社 1050円
(2004年発行の新版。伊藤信宏氏による解説が充実。)
[3]全音楽譜出版社 1050円
[4]Dover版ミニチュア・スコア 525円(amazon.co.jpの洋書通販の価格)
(昨今急激にシェアを広げているリプリント版の王者ドーヴァーの超普及版です。ちなみにリプリント版とは、オリジナル出版社が作成した版権切れになった古い版を、コピーして出版している版のことです。この手の出版社ではDoverのほか、同じくアメリカのKalmusが有名です。)
※研究者の手が入っているので[1]がオススメです。値段的にはアマゾンで買う[4]でしょう。ちなみにアカデミアでは1130円ですから、アマゾン恐るべしです。
○CD
[1]ノイマン指揮チェコ・フィル
〈1972年録音〉[スプラフォン COCO70589] 1050円
(スラヴ舞曲集との組み合わせ)
[2]クーベリック指揮チェコ・フィル
〈1991年録音〉[スプラフォン COCO70408] 1050円
(モーツァルトの《プラハ》交響曲とのカップリング)
[3]イシュトヴァン・ケルテス指揮ウィーン・フィル
〈1961年録音〉[デッカ UCCD7005] 1000円
(管楽セレナードも収録)
[4]レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル
〈1962年録音〉[ソニー・クラシカル SICC357] 1680円
(序曲《謝肉祭》、スメタナ:《モルダウ》等を収録)
[5]ショルティ指揮シカゴ響
〈1983年録音〉[デッカ UCCD5018] 1800円
(シューベルトの《未完成》も収録)
※本場チェコの指揮者とオケによる[1][2]か、新世界アメリカのオケによる[4][5]か、はたまたハンガリー出身の指揮者が若い時にウィーン・フィルと激突した[3]か、というところでしょうか。ちなみに第1楽章提示部を反復しているのは、[4]と[5]です。
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