第24回演奏会について
第24回定期演奏会は、終了いたしました。
次回演奏会へのご来場を、心からお待ち申し上げます。
■ 指揮者紹介
小林 幸人 / 指揮
東京音楽大学を卒業後、ホルン奏者を経て、桐朋学園大学で指揮を学ぶ。ホルンを守山光三、宮田四郎、指揮を、紙谷一衛の各氏に師事。また飯守泰次郎、尾高忠明、小澤征爾の各氏のレッスンにも参加し研鑽を積む。在学中より東京オペラプロデュースの指揮者となり、内外著名指揮者のアシスタントを務め、後に「カルメン」「ヘンゼルとグレーテル」を指揮した。新国立劇場オペラ公演の副指揮者も務めた。東京フィルハーモニーの定期演奏会の合唱指揮者を務める等、合唱音楽、宗教音楽にも取り組む。
アマチュアの演奏活動にも力を入れ、管弦楽、吹奏楽、合唱、マンドリン等、その数は数十団体に及び、その明確な指揮と指導には定評がある。95年にはザルツブルグで開催されたジャパンウィークにグローバルフィルハーモニーの指揮者として参加し、モーツァルテウム大ホールで演奏し好評を得た。
■ ソリスト紹介
上里 はな子
愛知県豊橋市生れ。2歳より両親からヴァイオリンの手ほどきを受ける。1987年、第41回全日本学生音楽コンクール小学生の部で全国第1位。兎束賞受賞。1989年、第43回全日本学生音楽コンクール中学生の部で全国第1位。兎束賞受賞。1990年6月、豊橋市に於いて、第一回のヴァイオリンリサイタルを開催する。1990年、豊橋市の文化振興特別賞を受賞する。
1994年、第63回日本音楽コンクール入選。1997年、パガニーニ国際ヴァイオリンコンクール第5位。2001年、ヤッシャ・ハイフェッツ国際ヴァイオリンコンクール第2位。
桐朋女子高校音楽科を経て、1995年ウイーン国立音楽大学に入学し、安田生命クオリティ・オブ・ライフ文化財団から助成を受ける。ウィーン国立音楽大学のソリスト・オーディションで優秀賞を獲得し、室内楽のマイスル教授、フェルナンデス教授に認められ、リサイタルを行う。また、学内のオーケストラの一員としてムジーク・フェラインで大学主催の演奏会に度々出演した。
これまでに、ヴァイオリンを小林武史、小林健次、徳永二男、ゴールド・ベルク、ザハール・ブロン、ルッジェーロ・リッチ、ゲルハルト・シュルツの各氏に師事。室内楽をマイスル教授、フェルナンデス教授に師事。2001年に帰国し、東京、愛知、高知、熊本、沖縄など各地で数多くのリサイタルを開いている。また、全国各地でオーケストラとの共演もしている。第7回・9回 宮崎国際音楽祭に出演昨年10月に小品集「Tiare」をリリース
■ 曲目紹介
第24回定期演奏会で取り上げる3曲は、いずれもフィンランドの国民的作曲家ジャン・シベリウスの作品です。シベリウスは1865年12月8日にヘルシンキの北約100キロのところにあるハメーンリンナに生まれ、1957年9月20日にヘルシンキ近郊のヤルヴェンパーで没しました。20世紀の中ごろまで存命だったわけですから現代の作曲家(著作権も残存)ともいえますが、最後の約30年間はほとんど作曲活動を行なわなかったので、結構昔の作曲家という印象が強いのではないでしょうか。今回の3曲も含め、彼の代表作のほとんどは1920年代までに作曲されたものです。
●交響詩《フィンランディア》作品26
フィンランド第2の国歌とも言われるシベリウスの代名詞的作品です。1890年代のフィンランドは帝政ロシア(皇帝ニコライII世)による圧政下にあり、それに抵抗する愛国独立運動が徐々に力を増していた時代でした。そんな中、1899年に愛国歴史劇『歴史的情景』の上演が計画され、シベリウスはその付随音楽を書くという形でこの運動に参加することになりますが、もともとその劇音楽の終曲として書かれたのが《フィンランディア》でした。劇の上演は同年11月3日から5日に行なわれましたが、シベリウスはその後この劇音楽から組曲を編むことを計画、しかしこの終曲だけは組曲に含めず、1900年に改訂を加えて交響詩《フィンランディア》として独立させました。そして同年7月2日に、ロベルト・カヤヌス指揮によってパリの万国博覧会で演奏されたのです。
ロシアによる圧政を暗示するかのような荒々しい金管の咆哮に始まり、闘争を経て、輝かしい勝利へと曲は向かっていく、そんなドラマ仕立てが当時のフィンランド国民の愛国心を鼓舞したのは言うまでもありません。中間部の美しい旋律には後に歌詞が付けられ、独立した合唱曲としても演奏されています。賛美歌にも加えられているので、結婚式などで歌われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
●ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47
シベリウスが作曲した唯一のヴァイオリン協奏曲です。作曲の動機は、シベリウスの良き理解者であったアクセル・カルベラン男爵の薦めによるものですが、ドイツのヴァイオリン奏者ウィリー・ブルメスターもその作曲を強く進言していたと言われています。シベリウスは1903年、38歳の時に着手し、同年秋には草稿程度まで書き上げました。この時点でシベリウスは草稿をブルメスターに送っています。曲はブルメスターが翌1904年3月にベルリンで初演すべく、準備が進められていましたが、経済的な事情からそれより前に初演せざるを得なくなり、2月8日にヴィクトル・ノヴァーチェクの独奏、作曲者の指揮により、ヘルシンキで初演されました。しかしこの初演の評判は芳しくなく、シベリウスは改訂にとりかかります。ほぼ1年を費やした後に改訂版が完成、1905年10月19日に初演があらためてベルリンで行なわれました。しかしこの改訂版を初演したのも結局はブルメスターではなく、ベルリン宮廷歌劇場のコンサートマスターであったカール・ハリルの独奏によるものでした。なおこの時の指揮者はリヒャルト・シュトラウスでした。
現在一般的に演奏されているシベリウスのヴァイオリン協奏曲は、この1905年の改訂版によるものです。もちろん今回の当団の演奏もこれによります。
曲は3つの楽章から構成され、いかにも北欧的で雄大な情景が、独奏ヴァイオリンとオーケストラの緊張感伴う競演によって描かれています。長大な第1楽章がこの曲の白眉と言ってよいでしょう。抒情的な第2楽章、リズミカルで荒々しさも垣間見せる第3楽章がこれに続き、最後は華やかに曲を閉じます。
●交響曲第1番ホ短調作品39
シベリウスはその生涯に交響曲と名のつく作品を8曲作曲しました。最初の交響曲は1892年に書いた、フィンランドの伝承大叙事詩『カレワラ』に基づく声楽付き大作《クレルヴォ交響曲》ですが、これは一般的な交響曲の概念には当てはまらないということもあり、ふつうシベリウスの交響曲といえば、番号の付けられた第1番から第7番までの7曲を指します。
そういう意味で、1899年に作曲された交響曲第1番は、シベリウスにとっての最初の交響曲であり、交響曲という伝統的な形式に初めて取り組んだ彼の意気込みが伝わってくる名作に仕上っています。7曲の中で最も編成が大きく、ティンパニ以外の打楽器(シンバル、バスドラム、トライアングル)が必要な交響曲もこれだけです(例外として第4番のグロッケンシュピールがありますが……)。 シベリウスの交響曲はこの第1番と次の第2番でいったんピークを迎え、以後第3番を分岐点にして、彼の交響曲はより内面的な傾向の作品となっていきます。わかりやすさ、聴きやすさという点では、第1番と第2番の人気が高いのですが、もちろん第3番以降の渋い作品にも多くのファンがいるのは言うまでもありません。
交響曲第1番は1898年の秋に着手され、1899年の初めに完成、同年4月26日にヘルシンキで名指揮者ロベルト・カヤヌスの指揮により初演されました(作曲者自身の指揮とする資料もあります)。シベリウスはチャイコフスキーを崇拝しており、この交響曲にもその影響が指摘されていますが、聴こえてくる音楽はまさにシベリウスのものです。
曲は伝統的な4つの楽章から構成されています。第1楽章はティンパニのトレモロに導かれたクラリネットのソロで始まるのが印象的です。ヴァイオリン2人による掛け合いのソロにもぜひ耳を傾けてください。第2楽章はチャイコフスキーの影響が特に指摘される緩徐楽章、第3楽章は野性味あふれるスケルツォ、〈幻想曲風に〉と指定された第4楽章は、その指示通り極めて自由に書かれ、オーケストラは激しく高潮していきます。
■ CD&スコア紹介
著作権が残存しているということもあり、3曲とも国内版のスコアは出ていません。いずれも安くはありませんが、海外の出版社のものを入手するしかないでしょう。なお、下記で紹介しているDover版は、銀座の某店などで購入する場合、下記の倍くらいしますので、Amazonでの購入がお徳です。下記のほか、アメリカではKalmus版、Warner Brothers版なども出ていますが、いずれも(Dover版も)オリジナル出版社のリプリント版です。
●交響詩《フィンランディア》作品26
○スコア
[1]Breitkopf & Hartel版 1250円(アカデミア・ミュージックのサイトでの価格)
[2]Dover版〔大型・Sibelius Tone Poemsというタイトルで《フィンランディア》以外にも数曲収録〕 2422円(Amazon.co.jpでの価格)
○CD
[1]バルビローリ指揮ハレ管
〈1966年録音〉[東芝EMI TOCE59034] 1700円
(《カレリア》、《悲しきワルツ》《トゥオネラの白鳥》等との組み合わせ)
[2]サージェント指揮ウィーン・フィル
〈1961年録音〉[東芝EMI TOCE11323] 1500円
(《カレリア》、《伝説》《トゥオネラの白鳥》との組み合わせ)
[3]カラヤン指揮ベルリン・フィル
〈1976年録音〉[東芝EMI TOCE59116] 1700円
(《伝説》、《悲しきワルツ》《トゥオネラの白鳥》等との組み合わせ)
[4]ベルグルンド指揮ヘルシンキ・フィル
〈1986年録音〉[東芝EMI TOCE59194] 1700円
(交響曲第2番、《大洋の女神》との組み合わせ)
[5]カム指揮ヘルシンキ・フィル
〈1987年録音〉[ワーナー・ミュージック(フィンランディア) WPCS21025] 1050円
(《カレリア》、サラステ指揮の交響曲第2番との組み合わせ)
[6]サラステ指揮フィンランド放送響
〈1987年録音〉[BMGジャパン(RCA) BVCC9369] 1900円
(交響曲第2番、《カレリア》等との組み合わせ)
※[1][2]は伝統的にシベリウスを得意とするイギリスの指揮者(名匠)による古きよき名演奏。特に[2]はウィーン・フィルとの組み合わせが珍しいものです。[3]はベルリン・フィルとの豪華な演奏。[4][5][6]は本場物で、共感豊かな演奏です。
●ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47
○スコア
[1]R.Lienau版〔緑の表紙〕 2290円(アカデミア・ミュージックのサイトでの価格)
[2]Eulenburg版〔黄の表紙〕 2290円(アカデミア・ミュージックのサイトでの価格)
[3]Dover版〔大型・Great Twentieth-Century Violin Concertosというタイトルの1冊で、シベリウスのほか、エルガーとグラズノフのヴァイオリン協奏曲も収録〕 2000円(Amazon.co.jpでの価格)
※オリジナル出版社は[1]ですが、譜面の縮小率が大きく(ということは見た目は小さくなります)、音符がつぶれたりしていて見にくいので、[2]の方をオススメします。版型も[1]と同じ大きさで、楽譜もなぜかこちらの方が見やすいです。
○CD
[1]チョン・キョンファ(vn)プレヴィン指揮ロンドン響
〈1970年録音〉[ユニバーサル(デッカ) UCCD7007] 1000円
(チャイコフスキーの協奏曲との組み合わせ)
[2]ムター(vn)プレヴィン指揮ドレスデン国立管
〈1995年録音〉[ユニバーサル(グラモフォン) POCG1941] 2500円
(2つのセレナード、ユモレスクとの組み合わせ)
[3]スターン(vn)オーマンディ指揮フィラデルフィア管
〈1969年録音〉[ソニー・クラシカル SRCR1556] 1800円
(チャイコフスキーの協奏曲との組み合わせ)
[4]五嶋みどり(vn)メータ指揮イスラエル・フィル
〈1993年録音〉[ソニー・クラシカル SICC342] 1680円
(ブルッフの《スコットランド幻想曲》との組み合わせ)
[5]カヴァコス(vn)ヴァンスカ指揮ラハティ響
〈1991年録音〉[BIS CD-500] 2729円(輸入盤・Amazon.co.jpでの価格)
(同曲の1903年初版との組み合わせ)
※この曲は女流の演奏が面白いです。[1]は若き日の彼女の鋭さが魅力。[2]はとても色っぽい演奏。指揮は現在彼女のご主人ですし……。[3][4]は鮮やかな技巧が売り。[5]は現行版とともに1903年の初版も収録しているので、ご興味のある方はどうぞ。ヴァイオリンも聴かせます。
●交響曲第1番ホ短調作品39
○スコア
[1]Breitkopf & Hartel版 2600円(アカデミア・ミュージックのサイトでの価格)
[2]Dover版〔大型・交響曲第1番&第2番の2曲収録〕 2316円(Amazon.co.jpでの価格)
○CD
[1]バーンスタイン指揮ウィーン・フィル
〈1990年録音〉[ユニバーサル(グラモフォン) UCCG4094] 1200円
[2]バルビローリ指揮ハレ管
〈1966年録音〉[東芝EMI TOCE59021] 1700円
(交響曲第5番との組み合わせ)
[3]コリン・デイヴィス指揮ボストン響
〈1976年録音〉[Philips 446 157-2] 2456円(2枚組・輸入盤・Amazon.co.jpでの価格)
(交響曲第2、4、5番との組み合わせ)
[3]ラトル指揮バーミンガム市響
〈1984年録音〉[東芝EMI TOCE55495] 2000円
(交響曲第6番との組み合わせ)
[4]ヤンソンス指揮オスロ・フィル
〈1990年録音〉[東芝EMI TOCE13067] 1300円
(《フィンランディア》&《カレリア》との組み合わせ)
[5]ベルグルンド指揮ヘルシンキ・フィル
〈1986年録音〉[東芝EMI TOCE59193] 1700円
(交響曲第6番との組み合わせ)
[6]カラヤン指揮ベルリン・フィル
〈1981年録音〉[東芝EMI TOCE13058] 1300円
(《カレリア》との組み合わせ)
※練習参考用にはテンポが遅い(特に第1楽章)[1][2]がオススメ。[3][4]はイギリスの指揮者による普遍的名演。[4][5]は本場物系、[6]はベルリン・フィルのゴージャスな音が魅力。
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